2025年8月24日日曜日

 研究代表の高柳妙子氏、分担者の藤崎竜一氏が、第9回アフリカ開発会議(TICAD 9)の分会の一つに参加しました。以下、藤崎氏の感想です。



「会場は活気にあふれていて、刺激がありました。

皆様ご存じの通り、アフリカはすでに世界で最も重要な大陸になっています。2050年には世界の若者の35%がアフリカ出身となるとのこと。あと25年は、そうは遠くない。アフリカからのゲストの方々からは自信とやる気に満ちていた様子がうかがえました。

治安もそうですが、若い人が海外に遊びに行けないほどの、景気低下と税金、円安、そして、アフリカには伝染病があるのではという偏見から、日本人はアレルギー的に伝染病を嫌うように思います。

小生も自分の人生設計では、アフリカの土地に踏み入れる事はないと思っていたが、気付くと中年になってから、アフリカをフィールドにするようになってしまいました。

生物工場として蚕を使う基礎研究は出来ていたのを覚えている。ある発表者は工場だけではなく実験場としてのアイデアも語っていた。発表後、その方に聞きに行くと37度では蚕がかわいそうだからね。と笑って話してくれたのを思い出す。

日本を牽引した養蚕業が廃れ、多くの蚕の系統が無くなり、日本中の桑畑が消える中、蚕にスポットを当ててくれた教授は素晴らしい。

しかし、37度での飼育は…虫好きで元家業が蚕糸である小生には、今でも複雑な気分になる。」

2025年8月4日月曜日

 第四回国際社会科学会議に高柳妙子(本研究総括)がキーノートスピーカーとして登壇します。タイトルは、「A Qualitative Field Study on Menstrual Hygiene Management and School Participation among Adolescent Girls in Maasai Communities, Kenya」を予定しています。同会議は、パキスタンのラーワルピンディ女子大学社会科学部によって開催され、様々な分野で活躍する研究者が集います。



2025年6月22日日曜日

本研究メンバーが国際開発学会(2025年6月21日開催)ラウンドテーブルにて発表しました。

テーマは以下です。

「アジアの脆弱層における子どもたちの教育とウエルビーング」



座長、企画責任者、コメンテーター、討論者として高柳妙子氏(東京女子大学)が兼務し、佐々木俊介氏(早稲田大学)、池田直人氏(難民を助ける会)が発表者として登壇しました。

セッションの冒頭に高柳氏から以下の説明がありました。

SDGsのスローガンは、「誰一人とり残さない」である。特に、目標4:質の高い教育をみんなに、とともに、低中途上国の子どもに焦点を当てた場合、様々な問題があります。当事者主導による学校安全教育政策、管理体制、学校と地域の協働連携活動等の実態を把握する必要があるが、学術的に明らかになっていません。今回は、脆弱層における子どもたちの教育とウエルビーングについて調査・研究を実施する研究チームメンバーが、それぞれの事例を発表します。最初に、インドネシアの事例、次にパキスタンの事例についてです。

詳細は以下の通りです。

①発表者:佐々木俊介

タイトル:インフォーマル・リサクルにおけるケガのリスクと移民労働者が抱える保健衛生の課題~インドネシア共和国バンタル・グバンを事例に~


質疑応答、コメント:

-Puskesmusがウェイスト・ピッカーに使われない理由をもう少し詳しく教えていただきたい。ぜひ、Puskesmusでも聞取りをされて位はいかがでしょうか。(国立社会保障・人口問題研究所、林氏)

➡返答:保険制度が変わっている最中であること、そもそもスラム街ではPuskesmusに行こうという発想がないこと、利用する気がないということが挙げられる。今後、Puskesmusへの訪問と聞取りは検討したい。

-廃棄物処理の効果は?子どもの働きは?(東京大学、関谷氏)

➡返答:ウェイスト・ピッカーによってリサイクルできているのは全体の廃棄物の2%であり、生ごみを除けば6.6%、プラスチック系俳句物については13.4%をリサイクルできており、それなりに貢献している。ただし、環境負荷が高いリサイクル方法であり、環境汚染を予防しているかとは言えない。家計を支える子もおり、平均すると収入は家計収入の30%になっている。しかし、世帯内における労働者の人数にかかわらず平均世帯収入は大きな変化をしないため、子どもが働き労働者が3人居る世帯では、家計収入に対するそれぞれの寄与が30%程度になっている可能性が高い。


②発表者:池田直人

タイトル:障害児の就学のリスク対応における保護者の思い-パキスタンKP州の事例-

質疑応答、コメント:

-モンゴル・スリランカのOOSC(Out of School Children)に関するJICA事業においては、就学の課題は、社会的な理由ではなく、物理的な理由が挙げられており、今回の発表内容とは違いがみられる。教育の質が下がるという理由で、IE学校に入ってほしくないという親、教員がいた。他方、過去の研究においては学力には影響はないとされている。解決策としてどう考えられるか。(早稲田大学、黒田氏)

➡返答:物理的な要因により学校に通えないという事例も確かに存在する。対象地のアボタバード、ハリプールでは、日本の県レベルの人口でありながら、公立学校が1000校以上あり、同じ数の私立学校、さらにはマドラッサー(宗教学校)やノンフォーマル教育学校も存在する。つまり、学校が近くにあるということであり、通学における物理的な問題は少ない。通えないという問題は、受け入れてくれる学校が遠くにしかなかったり、高学年の兄・姉が通う遠い中学校の近くにある小学校にいっしょに通わせようとするという場合もある。

-出生率の地域差はどのような状況か。(国立社会保障・人口問題研究所、林氏)

➡返答:人口ピラミッドは低年齢で広がり度合いが小さくなっている。20年以上前に、イスラマバードでは1夫婦に子どもは2人という状況が見られたが、地方、例えばKP州の仕事の同僚は子どもが10人いた。バローチスターン州などでは子が多く、国全体として一人の女性が出産する子の数が3,4名となっている状況がある。

-パキスタン独特の障害の種類がなにかあるのか。いとこ婚などが原因となっているのか。(林氏)

➡返答:過去のJICA事業で実施した調査では、障害者1500名、非障害者5000名を対象として、対象者の親がいとこ婚であるかどうか聞取りしたが、ほとんど差が見られず、両者とも65%程度だった。他方、ある種の障害、例えば、筋ジストロフィーや聴覚障害の中には、いとこ婚により発生率が高いという事例が見られた。また、ポリオの発症がある世界で2か国のうちの一つであり、調査では年に数ケースと言われても、実際にはもっと多いのではという話もある。

-父親の役割は。(林氏)

➡返答:親の会の代表が母親であり、メンバーに母親が多いため、同じ会の父親と意見が衝突することもある点、AAR事業がファシリテートする研修や会議は平日の日中のため、仕事にでている父親が参加できない時間帯であることなどの理由もあり、父親の積極的な参加がない。ただし、父親が通勤時に子どもを学校に送ったり、同地で男性の職業で多いドライバーなどは自由な時間を使えるため、子どもの送迎時間をとることができるというケースも散見される。

-障害者に対する政府による社会保障はあるのか。社会福祉師などはいるのか。(林氏)

➡返答:ベナジール・インカム・サポート・プログラムという、障害児者に対しては補装具や給付金を提供する事業があるが、課題として、このサービスを受けるための条件となっている障害者証の入手において、申請を拒否されるケースが多いことがAAR Japan事業で判明した。この解決のために、UNICEFが実施する児童保護プロジェクトと連携している。

-障害児の親の会はもともと存在していて、AARがこれを強化したのか(東京大学、関谷氏)

➡返答:存在していなかった。障害児と親たちの中には、家族・親族・地域に支えられている場合、支えられていない場合が混在しており、保護者間にはとくにつながりがなかった。障害児の家族の団体は、20年以上前からその必要性が訴えられており、パキスタンでの自身のJICA事業での経験を踏まえて、AAR Japanのインクルーシブ教育事業の教員研修などに加えて、障害児の親の会の形成支援と強化を盛り込んだ。



2025年5月26日月曜日

本事業に関連して、研究分担者の佐々木俊介氏を共同筆頭著者、研究協力者の池田直人氏を共著者(他共著者3名)とした、以下のタイトルの論文が、Journal of Material Cycles and Waste Managementに掲載されました。

Is child labor in waste picking an impediment to children’s schooling? A case study of a suburban slum in Jakarta 



2025年5月19日月曜日

 国際開発学会(2025年6月開催)のラウンドテーブルにて、発表が決まりました。要旨は以下の通りです。

和文タイトル

脆弱層における子どもたちの教育とウエルビーング

英文タイトル

Vulnerable children: global challenges in education, health, safety, and well-being

和文サブタイトル

インドネシアとパキスタンの事例から

英文サブタイトル

Case Studies of Indonesia and Pakistan


セッション登壇者

1.     企画責任者: 高柳 妙子、東京女子大学現代教養学部

2. 司会: 高柳 妙子、東京女子大学現代教養学部

3. 発表者, 佐々木 俊介 早稲田大学平山郁夫ボランティアセンター)

4. 発表者, 池田 直人 AAR Japan 難民を助ける会

5. 討論者, 参加者全員


要旨

1.     企画の背景 

SDGsのスローガンは、「誰一人とり残さない」である。

特に、目標4:質の高い教育をみんなに、とともに、開発途上国の子どもに焦点を当てた場合、感染症(COVID-19、マラリア、エイズ等)、自然災害・環境破壊(洪水、大気汚染等)、犯罪(傷害、虐待等)、事故(漏電、火事等)、学校襲撃のような、人間の安全保障の概念のなかでも言及されている「恐怖」が身近にあることにより、子どもにとって安全に生活し学べる環境とはかけ離れているのが現状である。特に、目標4.5「2030年までに、教育におけるジェンダー格差を無くし、障害者、先住民及び脆弱な立場にある子供など、脆弱層があらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする。」と定められている。他方、子どもの権利条約、女性差別撤廃条約、障害者権利条約等においては、教育への当事者の参加が強調されている。これらを踏まえると、当事者主導による学校安全教育政策、管理体制、学校と地域の協働連携活動等の実態を把握する必要があるが、学術的に明らかになっていない。


2.     主要な論点 

今大会における本企画セッションの主要な論点は、脆弱層における子どもたちの教育とウエルビーングについて調査・研究を実施する研究チームメンバーが、それぞれの事例を発表する。「インフォーマル・リサイクルにおけるケガのリスクと移民労働者が抱える保健衛生の課題:インドネシア共和国ブカシ市バンタル・グバンを事例に(佐々木・早稲田大学)」と「障害児の就学のリスク対応 における保護者の参画:パキスタンKP州を事例に-(池田・AAR Japan)」と題して研究を共有する。


3. 期待される成果

それぞれの社会文脈の中で、就学を保障する子どもの健康・安全維持改善についてどのような課題があるか、どのような対応が取られるべきなのかといった論点を議論する。本企画におけるディスカッションを通して、教育分野に沿った研究枠組みだけに固執することなく、環境、障害分野の専門家との融合研究による、科学的根拠に基づいた研究の課題設定を行い、調査を実施することにより、アジアにおける子どもの教育研究そのものの新たな発展の可能性を示すことが期待される。

2024年10月29日火曜日

 第三回国際社会科学会議に高柳妙子(本研究総括)がキーノートスピーカーとして登壇します。同会議は、パキスタンのラーワルピンディ女子大学社会科学部によって開催され、様々な分野で活躍する研究者が集います。主なトピックは以下の通りです。

  • 貧困撲滅
  • 健康の社会的決定要因
  • ジェンダーに配慮したカリキュラムと教育法
  • 女子のための包括的かつ質の高い教育
  • ジェンダーに基づく暴力
  • 女性と経済的エンパワメント
  • 包括的な環境と平等な機会
  • 女性と政治参加


2024年10月2日水曜日

 2024年2月に研究協力者の池田が、パキスタン現地調査を実施しました。特定非営利活動法人の難民を助ける会(AAR Japan)が、KP州(Khyber Pakhtunkhwa)州のハリプール(Haripur)及びアボタバード(Abbottabad)で実施している、インクルーシブ教育事業のサポートを受けて、障害児の公立学校への就学の現状と課題、教員・コミュニティ・保護者の連携などについて情報を収集しました。

 パキスタンにおけるAAR Japanのインクルーシブ教育事業が本格的に開始されたのは、2019年です。それ以前にも、洪水支援やWASH事業などで、公立学校のバリアフリー建設などのインフラ整備や関連分野のトレーニングの実施、障害のあるスタッフの雇用などを行ってきました。

 AAR Japanの同事業の概要は以下の通りです。

【プロジェクト目標】

KP州ハリプール郡、アボタバード郡の事業対象小学校約30校において、インクルーシブ教育が推進され、障がい児らが合理的配慮を受け、学校生活に参加し、学ぶことができる環境が整う。対象校がインクルーシブ教育の好事例として認知され、周辺の他校にインクルーシブ教育の経験やノウハウを共有できるようになる。KP州教員研修施設において、インクルーシブ教育の研修ができるようになる。

【活動内容】

主な活動は以下の通りです。

1.研修・啓発

2.建設・物品供与

3.訪問相談活動の実施

4.行政機関との協力促進

以下の写真は、事業によるトレーニング、ファシリテーションを通して、障害児の親たちが、自助グループ「カールワーン(Karwaan、ウルドゥー語で「キャラバン」を意味する)」を立ち上げ、コミュニティにおいて啓発活動をする様子。障害のある子どもをもつ母親や、コミュニティレベルで活動するレディー・ヘルス・ワーカー(Lady Health Worker)も集まった。

 研究代表の高柳妙子氏、分担者の藤崎竜一氏が、 第9回アフリカ開発会議(TICAD 9) の分会の一つに参加しました。以下、藤崎氏の感想です。 「会場は活気にあふれていて、刺激がありました。 皆様ご存じの通り、アフリカはすでに世界で最も重要な大陸になっています。2050年には世界...