第三回国際社会科学会議に高柳妙子(本研究総括)がキーノートスピーカーとして登壇します。同会議は、パキスタンのラーワルピンディ女子大学社会科学部によって開催され、様々な分野で活躍する研究者が集います。主なトピックは以下の通りです。
- 貧困撲滅
- 健康の社会的決定要因
- ジェンダーに配慮したカリキュラムと教育法
- 女子のための包括的かつ質の高い教育
- ジェンダーに基づく暴力
- 女性と経済的エンパワメント
- 包括的な環境と平等な機会
- 女性と政治参加
このブログは、タイトルにある科研費(基盤B)の研究の促進のために立ち上げました。
2024年2月に研究協力者の池田が、パキスタン現地調査を実施しました。特定非営利活動法人の難民を助ける会(AAR Japan)が、KP州(Khyber Pakhtunkhwa)州のハリプール(Haripur)及びアボタバード(Abbottabad)で実施している、インクルーシブ教育事業のサポートを受けて、障害児の公立学校への就学の現状と課題、教員・コミュニティ・保護者の連携などについて情報を収集しました。
パキスタンにおけるAAR Japanのインクルーシブ教育事業が本格的に開始されたのは、2019年です。それ以前にも、洪水支援やWASH事業などで、公立学校のバリアフリー建設などのインフラ整備や関連分野のトレーニングの実施、障害のあるスタッフの雇用などを行ってきました。
AAR Japanの同事業の概要は以下の通りです。
【プロジェクト目標】
KP州ハリプール郡、アボタバード郡の事業対象小学校約30校において、インクルーシブ教育が推進され、障がい児らが合理的配慮を受け、学校生活に参加し、学ぶことができる環境が整う。対象校がインクルーシブ教育の好事例として認知され、周辺の他校にインクルーシブ教育の経験やノウハウを共有できるようになる。KP州教員研修施設において、インクルーシブ教育の研修ができるようになる。
【活動内容】
主な活動は以下の通りです。
1.研修・啓発
2.建設・物品供与
3.訪問相談活動の実施
4.行政機関との協力促進
以下の写真は、事業によるトレーニング、ファシリテーションを通して、障害児の親たちが、自助グループ「カールワーン(Karwaan、ウルドゥー語で「キャラバン」を意味する)」を立ち上げ、コミュニティにおいて啓発活動をする様子。障害のある子どもをもつ母親や、コミュニティレベルで活動するレディー・ヘルス・ワーカー(Lady Health Worker)も集まった。
2023年11月11日、12日に開催された国際開発学会のラウンドテーブルにおいて、高柳妙子氏(早稲田大学・筑波大学)が座長を務め、本研究チームメンバーが発表しました。
日下部達哉氏(広島大学教育開発国際協力研究センター)は、「バングラデシュにおける学齢期の子どものウエルビーング」をテーマに、バングラデシュ農村部における状況の変化を以下に沿って丁寧に報告されました。
-バングラデシュの農村部における学齢期のウエルビーング:20年の軌跡
-フィールドワークによるログニチュードスタディから見えた家庭の経済雇用状況、職の変化
-子どもの就学の変化
-クリニックへのアクセスの変化
-栄養状態の改善
-井戸水のヒ素の問題など
-農村部の社会および家族構造
藤崎竜一氏(帝京大学医療技術学部スポーツ医療学科)には、「日本におけるムスリム家庭の出産と子育ての現況」をテーマに、イスラム圏出身の人々への声を様々な視点から収集・分析して、これらを考察しました。
ラウンドテーブルには約15名の方々にご参加いただき、以下に関する質疑応答および討議がなされました。
-土地を売った人々の行き先(バングラデシュ)
-障害児に関する問題(バングラデシュ)
-調査地の選定理由(バングラデシュ)
-ワクチン接種状況(バングラデシュ)
-人々が土地を売ったことにyおる格差(バングラデシュ)
-購買意欲の変化、保健教育による保健医療への影響(バングラデシュ)
-イスラム教の厳格性の有無とその背景(日本のムスリム)
-日本における外国籍の女児の割礼(日本のムスリム)
-茨城、沖縄を調査対象地とした理由(日本のムスリム)
-政策的意義と実現方法(バングラデシュおよび日本のムスリム)
その他、健康であることと、障害児の就学に関する討論も行われた。
この点について、本研究における「健康」とは、WHO憲章(1947年採択)前文において定義される、「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。(日本WHO協会訳)」を採用している。
国際開発学会(2023年11月開催)のラウンドテーブルにて、発表が決まりました!要旨は以下の通りです。
企画趣旨
今大会における本企画セッションの主要な論点は、子どものウエルビーングについて調査・研究を実施する研究チームメンバーが、それぞれの事例を発表する。「バングラデシュにおける学齢期の子どものウエルビーング」と「日本におけるムスリム家庭の出産と子育ての現況」に関する研究を共有する。それぞれの社会文脈の中で、就学を保障する子どもの健康・維持改善についてどのような課題があるか、どのような対応が取られるべきなのかといった論点を議論する。事例の発表ののち、ラウンドテーブルでの活発な討論をとおして、共通の理論的枠組みを模索する。
本セッションを通して、期待される成果としては、各国の文脈に基づいて、学校・家庭・地域社会の三者連携による就学を保障するための子どもの健康状況及び課題を議論する場合に教育と保健医療という二つの専門的な観点を持ち込む点である。本企画におけるディスカッションを通して、教育分野に沿った研究枠組みだけに固執することなく、保健医療の専門家との融合研究による、科学的根拠に基づいた研究の課題設定を行い、調査を実施することにより、アジアにおける子どもの教育研究そのものの新たな発展の可能性を示すことが期待される。
今回のセッションでは、アジア各国においてフィールドワークを精力的に実施している2名より各調査実施の様子、振り返りと今後の展望について話題提供を頂く。その上で、上記の目的を念頭に議論を進めていく計画である。
登壇者
趣旨説明:高柳 妙子(早稲田大学・筑波大学)
発表者①: 日下部 達哉 会員(広島大学教育開発国際協力研究センター)
「バングラデシュにおける学齢期の子どものウエルビーング」
発表者②: 藤崎 竜一(帝京大学医療技術学部スポーツ医療学科救急救命士コース、医学部救急医学講座・ER)
「日本におけるムスリム家庭の出産と子育ての現況」
モデレーター: 高柳 妙子(早稲田大学・筑波大学)
セッションの進行方法
初めに企画者より、趣旨説明を行う。その後、発表者の日下部会員と藤崎氏に30分ずつご発表頂く。2つの発表が終了した後、フロアをオープンにして全体議論を実施する。参加される会員には闊達な議論への参加が期待される。
第三回国際社会科学会議に高柳妙子(本研究総括)がキーノートスピーカーとして登壇します。同会議は、パキスタンのラーワルピンディ女子大学社会科学部によって開催され、様々な分野で活躍する研究者が集います。主なトピックは以下の通りです。 貧困撲滅 健康の社会的決定要因 ジェンダーに配慮...