2026年3月1日日曜日

パキスタンが直面する栄養危機とその背景

 パキスタンにおける栄養問題は、単なる健康上の課題を超え、経済インフレ、不十分な統治(ガバナンス)、そして気候変動が複雑に絡み合った「多角的な危機」となっています 。最新の資料から、その深刻な現状を紐解きます。



1. 深刻な栄養不良の現状

パキスタンは世界でも有数の発育不全児が多い国の一つです

  • 発育不全の蔓延: 5歳未満児の発育不全(Stunting)の有病率は37.6%(2018年データ)に達しており、南アジア諸国の中でも極めて高い水準にあります

  • 身体・認知への長期的影響: 成人の約44%が、子供時代の栄養不良に起因する身体的・認知的影響を受けている可能性が指摘されています

  • 高い死亡率: 栄養不足による免疫力低下は、感染症リスクを高めています 。2023年のデータでは、新生児死亡率(1,000人当り38人)や5歳未満児死亡率(同59人)において、近隣諸国と比較しても著しく高い数値を示しています

    国名

    割合%

    データ取得年

    データ元

    Bangladesh

    23.6

    2022

    Wold bank Data[1]

    Bhutan

    17.9

    2023

    Wold bank Data

    India

    35.5

    2020

    Wold bank Data

    Maldives

    15.3

    2017

    Wold bank Data

    Nepal

    24.8

    2022

    Wold bank Data

    Pakistan

    37.6

    2018

    Wold bank Data

    Sri Lanka

    10.5

    2024

    Wold bank Data



    [1] https://data.worldbank.org/indicator/SI.POV.NAHC

  • 発育不良の有病率、年齢別身長Prevalence of stunting, height for age5歳未満)

2. 背景にある経済的・社会的要因

栄養状態を悪化させている最大の要因の一つが、近年の急激な物価高騰(インフレ)です

  • 食糧インフレの直撃: 小麦粉や野菜などの基本食品の価格が23週間連続で上昇しており、低所得層は十分な食事を確保することが困難になっています

  • 貧困の拡大: 世界銀行によれば、国内の貧困率は44%に達しています

  • 医療・看護体制の危機: 深刻なのは食糧だけではありません。医療現場では、低賃金や劣悪な待遇を背景に、医師や看護師の国外流出(ブレイン・ドレイン)が過去最高水準で続いており、現場の「スキルの空洞化」が深刻な問題となっています

3. 食品衛生と安全な水の不足

摂取する食品の「質」も大きな課題です

  • 不純物混入食品: 有害な化学物質を含むミルクや質の悪い油、着色料を使用した香辛料などが当局により大量に押収されています

  • 水と衛生: 安全に管理された飲料水を利用できる人口は45%に留まっています 。停電などによるインフラの停止は水不足を招き、下痢性疾患などを通じて二次的な栄養失調を誘発しています

4. 改善に向けた動きと今後の展望

こうした厳しい状況に対し、各地で対策も始まっています。

  • 州政府の取り組み: パンジャーブ州では公立学校での栄養強化ミルク提供や、食料品を安価に提供する「サフーラト・バザール」の設置が進められています

  • 国際社会の支援: ドイツからの1億1400万ユーロの支援パッケージや、ユニセフと連携した児童福祉の強化など、国際的な協力体制も構築されています


パキスタンの栄養問題は、「経済的アクセス」「食品の安全」「慢性的な発育不全」の3つが大きな柱となっています 。政府によるデジタル化や取り締まりの強化、国際的な支援が行われているものの、拡大する貧困や気候変動の影響がその効果を相殺している厳しい状況です

未来を担う子どもたちの健康を守るため、持続的な経済安定とガバナンスの改善が急務となっています。

障害児の親の会「カールワーン」の活動⑬:ハリプール社会福祉局長(視覚障害のある女性)とカールワーンメンバーの定期打合せ

  カールワーン(障害児の親の会)は、継続的に社会福祉局との打合せを行っています。難民を助ける会のインクルーシブ教育促進プロジェクトの活動の一環として行われたこのような打ち合わせは、プロジェクトが終了しても継続していきます。

特に、ハリプールの社会福祉局長は、視覚障害のある女性です。彼女は、JICA(国際協力機構)が実施した過去の技術協力事業にも関わりの深い人物です。このような障害当事者やその家族が、ハリプールにおける障害児者の権利擁護に貢献しています。




障害児の親の会「カールワーン」の活動⑫:国際障害者デーにイベントを開催

 カールワーン(障害児の親の会)のメンバー、特に母親は、12月3日に国際障害者デーを記念して地域でウォークを企画しました。このイベントは、すべての規則と規制に従って組織的に実施されました。主な目的は、コミュニティ内でのインクルージョンを促進し、公園などの公共の場所にスロープを設置することを提唱し、障害のある子供たちのインクルーシブ教育を奨励することでした。

障害のある子供も障害のない子供も一緒にこの活動に参加しました。絵を描き、それをシンプルで意味のある方法ですべての人に提示することで、私たちのコミュニティにおける障壁を強調しました。






障害児の親の会「カールワーン」の活動⑪:行政担当局との打合せ

  カールワーンの活動は草の根レベルにとどまりません。活動の拠点はKP州ハリプール(日本で言う都道府県レベル)の都市部ですが、難民を助ける会のインクルーシブ教育促進プロジェクトの対象校が、ハリプールの農村部、北部のアボタバードに展開しており、カールワーンもこのプロジェクトへの支援として、活動のエリアを拡大しています。

また、行政へのアプローチも行っており、ハリプールの教育局や社会福祉局とも定期的な打ち合わせを行っています。こういった活動は、障害児の権利擁護としてとても大切です。プロジェクトが終了し、対象校の教員や行政担当者たちが異動してしまっても、カールワーンは継続的に学校、行政との議論を重ねていきます。





障害児の親の会「カールワーン」の活動⑩:点字を教えるための補助教員の継続配置

 視覚障害のある児童生徒のインクルーシブ教育においても、点字の指導がかかせません。難民を助ける会のインクルーシブ教育促進プロジェクトにおいて、点字指導のために、現地の視覚障害当事者で、点字が指導できる人材を見つけ出しました。プロジェクト対象学校を定期的に訪問して、補講という形で視覚障害のある児童生徒に点字指導が行われてきました。その際、高くはありませんが、プロジェクトから給料が支払われていました。


しかしながら、このような日本のNGOによる事業はいつか終了していしまいます。事業対象校から外れてしまった学校においても、点字指導のニーズは継続します。そこで、カールワーンは、彼らの給料を、コミュニティからの寄付により賄うという活動も行っています。他方、プロジェクト側でもこの点についは、政府側と議論を重ねており、点字指導教員に対する給与を、政府から出すような仕組みづくりに取り組んでいます。






2026年2月10日火曜日

障害児の親の会「カールワーン」の活動⑨:障害当事者による障害児者と家族のためのイベント企画

この活動はカールワーンのメンバー自宅で企画したものす。二分脊椎によって様々な困難を抱える母親と子どもたちが参加しました。子どもに関する多くの問題に直面している母親たちは、これらの問題を解決するために、二分脊椎の障害当事者であるMuzammal Islam氏を招き、子どもたちの身体的な問題だけでなく、トイレのアクセスの問題も解決できるよう支援しました。

Muzammal Islam氏は、本研究の現地協力者として、また、難民を助ける会のスタッフとして活躍しています。









2026年2月9日月曜日

障害児の親の会「カールワーン」の活動⑧:公立学校での点字に関する啓発活動

 カールワーンは、地元の公立学校を対象に様々な活動を実施しています。例えば、視覚障害のある児童生徒が通う学校で、点字に関する基本的な情報提供を行いました。インクルーシブ教育の促進のためには、パキスタンのKP州においては課題は山積しています。

カールワーンは、ひとつひとつの課題とニーズを把握し、メンバーがやれることを計画・実施しています。難民を助ける会が実施してきた事業の対象校ですが、この事業の終了後にも支援をし続けていくのはカールワーンのような団体です。






パキスタンが直面する栄養危機とその背景

  パキスタンにおける栄養問題は、単なる健康上の課題を超え、経済インフレ、不十分な統治(ガバナンス)、そして気候変動が複雑に絡み合った「多角的な危機」となっています 。最新の資料から、その深刻な現状を紐解きます。 1. 深刻な栄養不良の現状 パキスタンは世界でも有数の発育不全児が...