今回の記事では、10年ほど前の古い情報になってしまいますが、国際的な子どもの権利保障の動向を知る上で重要な資料である、国連児童の権利委員会が発表したケニアに関する総括所見(2016年3月公表)について解説します
この資料は、ケニア政府から提出された第3回〜第5回合同定期報告書をもとに、国連が同国の子どもの権利の進展や、今なお残る深刻な課題について分析・勧告を行ったものです
1. ケニアにおける近年の前進と肯定的側面
まず、ケニア政府が近年進めてきた法制度や政策の整備について、委員会はいくつかの肯定的な進展を歓迎しています
国際条約の批准: 2007年に国際養子縁組に関するハーグ条約、2008年に障害者の権利に関する条約をそれぞれ批准しました
。 国内法の整備: 2010年の憲法改正において「児童の最善の利益を最優先する」ことが明記されたほか、女性器切除(FGM)禁止法(2011年)、最低婚姻年齢を18歳に統一した婚姻法(2014年)、家庭内暴力防止法(2015年)などが相次いで制定されました
。 政策の策定: 国家児童行動計画(2015-2022年)や、児童の性的搾取に対抗するための行動計画が策定されています
。
このように、法的枠組みの構築という点では着実な歩みが見られます
2. 今なお残る主要な懸念分野と国連からの勧告
一方で、法律や政策が作られたものの、それが現場で十分に実施されていない、あるいは新たな格差が生まれているといった深刻な課題が多数指摘されています
法律の不一致と地方分権化の課題
2010年の改正憲法と既存の「2001年児童法」などの国内法との間で、整合性(調和化)がまだ完了していません
根強い差別とアルビノの児童への暴力
女児や障害児、HIV/AIDSに罹患している子ども、難民、ストリートチルドレンなどに対する差別が、政策や実践の場で根強く残っています
出生登録の地域・民族間格差
全体の出生登録数は増加しているものの、農村部や遠隔地、あるいは難民、無国籍者、特定の民族(ヌビア人やマコンデ人など)の子どもたちにおいては、無料かつ普遍的な出生登録がいまだに達成されていません
児童への暴力と有害な伝統的慣習
学校での体罰を禁止する法律はあるものの、家庭や学校現場での体罰は今も広く行われています
代替的ケア(児童養護施設)の課題
一国多妻制を認める法律が、男女平等の養育権を損なう要因として挙げられています
障害・保健・福祉と教育の格差
障害児に対する偏見や就学拒否、医療費の経済的負担が課題です
特別な保護(難民・児童労働・少年司法)
ケニアは多くの難民を受け入れていますが、長期にわたるキャンプ収容政策や、適切な手続きを欠いた送還による家族離散が批判されています
まとめ
ケニアは、子どもの権利を守るための先進的な法律を数多く導入してきた一方で、根強い伝統的慣習、地域的・民族的な格差、そして予算や行政システムの不備によって、多くの子どもたちが権利の侵害に苦しんでいる現状が浮き彫りになりました
「法を整備すること」と「それを実効性のあるものにすること」の間にある大きなギャップをどう埋めていくのか、今後のケニア政府の具体的な施策が注目されます
参考文献
United Nations. (2016). Concluding observations on the combined third to fifth periodic reports of Kenya (CRC/C/KEN/CO/3-5). Committee on the Rights of the Child.
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