2026年7月2日木曜日

インドネシアの子どもの権利委員会の総括所見

 今回は、国連の「子どもの権利委員会(Committee on the Rights of the Child)」が採択した、インドネシアに関する包括的所見(Concluding observations)についての文献レビューをご紹介します

この報告書は、インドネシア政府から提出された第5回および第6回の合同定期報告書を受け、2025年5月に開催された会合での審議を経て採択されたものです 。委員会は同国のこれまでの取り組みを評価しつつも、依然として残る多くの課題に対して、緊急かつ具体的な措置を講じるよう強く勧告しています

委員会が示した主要な指摘と勧告の要点は以下の通りです。

1. 法整備と実施体制の強化

子どもの権利を守るための法的・組織的な基盤について、以下の点が指摘されています

  • 国内法の整合性: 2023年刑法(Law No. 1/2023)を早急に改正し、思春期の若者が性・生殖に関する健康情報を適切に得られるよう妨げとなっている条文の撤廃や、性暴力の被害児が速やかに人工妊娠中絶にアクセスできる環境を整えることが求められています

  • 調整機能と資源配分: 女性エンパワーメント・児童保護省に十分な権限と予算を与え、分野横断的および地方レベルでの児童の権利の実施を統括させるべきだとされています 。また、社会的保護や教育、保健、水道衛生の分野へ積極的な予算配分(特に東部地域への傾斜配分)が促されています

  • 独立した監視機関: インドネシア児童保護委員会(KPAI)の権限が限定的で調査権を持たない現状が指摘され、子どもからの苦情を調査・処理できるよう機能を強化することが強く求められています

2. 一般原則(非差別、子どもの最善の利益など)

子どもたちの基本的人権を守る上での根本的な原則について、地域格差などの課題が挙げられています

  • 地域格差の we 是正: インドネシア東部地域(パプア州や東ヌサ・テンガラ州など)の子どもたちが、西部地域に比べて質の高い医療、教育、衛生、社会的サービスへのアクセスにおいて深刻な格差に直面していることに強い懸念が示され、早急な是正が促されています

  • 子どもの最善の利益: 養子縁組や親権の決定、離婚手続きにおける子どもの親権判断が、「子どもの最善の利益」ではなく、しばしば宗教や子どもの年齢を基準に判断されている現状に懸念が示されています

3. 暴力からの保護および有害な慣行の根絶

子どもを暴力や古い慣習から守るための対策も急務とされています

  • 性暴力への対応: 2022年の性暴力犯罪法(Law No. 12/2022)の完全な実施に必要な派生規則(施行令など)の未策定分を迅速に採択し、被害児の回復・社会復帰を追跡できるケースマネジメントシステム(オンライン情報システム)を強化するよう勧告されています

  • 児童婚と女性器切除(FGM): 児童婚の最低年齢が19歳に引き上げられたものの、一部の州では依然として高い割合で推移しており、婚姻免除(dispensation)の申請増加や慣習が取り組みを阻害しています 。また、医療従事者への禁止措置にもかかわらず広く行われている女性器切除を完全に根絶するため、罰則を含むロードマップを大統領令として採択することなどが求められています

4. 障害児への配慮

障害を持つ子どもたちが置かれている深刻な状況への対策も盛り込まれています

  • パスン(監禁・拘束慣行)の根絶: 1977年から禁止されているにもかかわらず、家族や地域、施設において今なお続いている「パスン(Pasung:鎖や木枠による監禁・拘束)」を完全に撲滅するため、厳格な法執行や意識改革キャンペーンを行うよう求めています

  • 脱施設化と貧困対策: 障害児の施設収容が増加している傾向に懸念が示され、家族との同居を可能にする在宅の専門的支援を提供することや、健常児に比べて高いスタウンティング(発育阻害)や貧困率に対処するため、社会的保護制度を障害に対応したものにすることが勧告されています

5. 健康、教育、および特別保護措置

子どもの日々の健康や教育、そして司法制度についても具体的な提言がなされています

  • 保健・栄養: パプア州における乳幼児や妊産婦の高い死亡率への対策や、マルク州や東ヌサ・テンガラ州など東部地域での深刻な「ウェイスティング(急性栄養不良によるやせ)」への栄養支援が求められる一方で、学齢期・思春期の子どもの肥満増加への規制も求められています

  • 教育の質と包摂: 予算全体の最低20%を教育に充てる憲法上の規定を評価しつつも、デジタル格差の解消や、障害児が主流派の学校で学べる包括的教育(インクルーシブ教育)の推進を急ぐよう提言されています

  • 司法と条約の批准: 刑事責任を問われる年齢を少なくとも14歳へと引き上げることや、児童の権利条約の「通報手続きに関する選択議定書」の批准が強く勧告されています

参考文献

  • United Nations Committee on the Rights of the Child. (2025). Concluding observations on the combined fifth and sixth periodic reports of Indonesia (CRC/C/IDN/CO/5-6*). https://undocs.org/CRC/C/IDN/CO/5-6

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